大阪府犬管理指導所_視察レポートby かおり
先日、大阪府犬管理指導所なる施設を見学してきました。
どういった施設かご存知ですか?こちらでの業務は大きくふたつに分けることが出ます。
捕獲または引き取られた犬の譲渡、そして譲渡出来なかった犬・猫の処分(殺すこと)です。


これから話すことは、考えれば考えるほど、知れば知るほど新たな問題に出くわすと思います。
つまりそれぞれの問題を一発で解決できるような答えはないということです。
しかしそんな魔法のような答えを探す必要はないと思います。
それよりも自分が最も関心を持った事柄を掘り下げて調べ、そして何より一体自分になにが出来るのかを考えてみてください。


捕獲というのは、野良、または迷い犬などを捕まえることです。
都市部では野良犬を見かけることはまずありませんが、
河川近辺、山間部、また田舎と呼べるようなところではまだまだ放し飼いをしている人々がいるようです。
当たり前のように野良と言う言葉を使いましたが、一体この野良犬はいつから野良となったのでしょうか?

引き取りというのは、無知で傲慢な連中から処分を依頼されて引き取るという意味です。
連中の自己中心的な理由は様々です。
例えば、「今度引っ越すところでは動物を飼えないんだ。」「病気になったからもう飼えない。」
「自分も年をとったから犬の世話まで出来ない。」
など良識ある人にはおよそ信じられないような理由で、ともに生活してきた家族を殺してくれと連れてくるのです。
手放すことが悪だとは言いません。
ただ、手放すしかないのなら信頼できる新しい飼い主をなんとしてでも見つけてやるのが当然のことだと思うのです。
そしてこの連中が人間であり、連れてこられたのが人間以外の動物である以上、行政は引き取らなければなりません。

なぜか?

法律上、我々人間社会の衛生確保のためです。
もしこのような犬・猫処分施設がなければ自分にどういった影響が出てくると思いますか。
無責任な連中が動物たちをその辺に捨て去ることから、次になにが起こるのか連想してみてください。

譲渡とはどういうことでしょうか?
もしあなたがこのような施設を訪ねたなら、職員の方がいろいろな話をしてくださるでしょう。
そして、胸を張り誇らしげに、瞳を輝かせて話してくださるのがこの譲渡活動のことだと思います。

譲渡とは、捕獲・引き取られた動物たちを、新たな飼い主たちに譲り渡すことです。
設立当初は殺すことが目的だった施設が、今では生かすほうへと確実に方向転換されているのです。
今回わたしが訪ねた施設でも、職員の方々の
「出来ることなら殺したくはないんだ、新しい飼い主の下で幸せに暮らすことが出来るなら・・・」
という想いが、言葉だけではなく彼らの行動・活動からもうかがい知ることが出来ました。

私が訪ねた施設は、大きな建物に囲まれ申し訳なさそうに建てられた小さな事務所と、抑留しておく檻や炭酸ガス(二酸化炭素)による殺処分装置、子犬飼育室、餌などの物置倉庫を兼ねた地下施設です。
本当に規模の小さい施設で、当時の社会がいかに動物の殺処分に無関心であったかが伺われます。
事務所の隣は車ごと降りれるエレベーターが併設されており、その隅では即席の二畳ほどのケージの中に子犬が7匹ほど放されていました。
譲渡される可能性がある子犬たちは2,3週間ここで育てられます。
すぐに譲渡しない、このことには理由があります。病気の有無の確認、人にならすための軽い訓練などがそれです。
ちなみに生まれて一ヶ月たたない子犬をこのように育てることは、コスト面、人材面、技術面などの問題により難しい(無理)とのことでした。
母犬の授乳が何より必要だそうです。
母犬の授乳の代わりに出来ることがあるんじゃないかとなったとき、上記の問題にぶち当たるというわけです。
この子犬たちは夜は地下の子犬飼育室に収容されます。
暖房が効いており、えさも子犬用のドライフードなどが用意されています。」
でもやはりこんな部屋にずっと入れておくのはよくないだろうと、昼間は地上に出して風に当たらせ、運動させているのだそうです。
しかしコンクリートの上は冷たい。風もまだまだ冷たい。そこはちゃんと考えてらっしゃいます。
電器カーペットが敷かれていました。
動き回ったあとはその上でゴローン。震えている子犬は一匹もいませんでした。
しかしこの子犬たちすべてに譲渡先が見つかっているわけではありません。
最終的に譲渡先が見つからない場合、職員の方は自らの手で殺さなければならないのです。

わたしたちが地下に降りると犬たちはキュイン泣きだしました。
わたしが実家に帰ると愛犬が同じように鳴きながらすごい勢いで玄関まで飛んできます。
檻に収監された犬たちは、こんな目に会ってもやっぱり人が好きなんです。信じてるんです。
威嚇するようにほえる犬はいません。もちろんそのような犬ばかりではありません。
怯えているのか目を見開いてひたすら震え続ける犬もいました。
檻の中は床がタイル張り。もちろん暖房は効いていません。いい環境とはいえません。
しかし冒頭で述べたようにここは収容動物を殺すために建てられた施設だったのです。
さて、ここで問題提起です。職員の方はもしかしたら飼い主が現れるかもしれないという望みをかけて、法律どおり3日で殺すことはありません。また3日は短すぎる。法律上で2週間に改定しようと署名活動をされている方々もいらっしゃいます。
しかし、こんな意見もあります。こんな環境で檻に閉じ込めるくらいなら早く殺してやるほうがいい。
どちらの意見も正論だと思います。
そしてどちらか片方を完全に正当化するにはまた様々な問題が絡んでくるのです。あなたならどう考えますか?

檻の隣には、約1.5*2.0*1.2mほどの銀色の箱がありました。炭酸ガス(二酸化炭素)殺処分装置です。
ようは窒息死させる装置です。ほとんどの施設でこの装置が使われているとのことでした。
麻酔薬による処分方法はコスト面、手間隙などを考量した場合、現実離れした方法であるとのことでした。
人間が最も苦しいと感じる死に方は、窒息死であると聞いたことがあります。しかし確かな情報ではありません。
でももしこの話が本当だとしたら、犬たちもやはり苦しいに違いありません。
実際問題処分せざるおえない動物たちはまだまだいなくなりそうにありません。
この現実を踏まえて、犬たちを安楽死させてやれる現実的な方法を考えなければならない必要性を感じます。

さらに奥にはえさがたくさん置かれていました。ドライフードのほかにも缶詰もありました。
ドライフードを食べない犬用とのことです。
死が決まっている犬たちにも、それまでは普段どおり食べさせてあげたいという職員の方々の思いやりです。
しかしもちろんこう言う方もいらっしゃいます。死ぬことが決まっているのに何で税金を使って缶詰までやらなければならないんだと。

現在環境省では、終生飼養支援システムなる事業が進められています。
各施設で収容している動物たちをネット上で公開して、都道府県の垣根を越えて新たな飼い主を探そうという試みです。
このシステムが稼動し世に広く普及すれば、これから動物を飼いたいと思う人はペットショップに行く前にまず譲渡動物の中からパートナーを探そうという動きになるのではないでしょうか。さらに詳しいことは、この終生飼養支援システムの開発に参加してらっしゃる方のサイトを参考にしてください。このシステムを絵に描いた餅にしないためにはどうすればいいのか、そこら辺の問題点も書かれており、すでに行動を起こされています。


そして子犬飼育室。場所がないので地下に作るしかなかったそうです。

そして隣には小さな檻が五つ。
そのうちの一つに横になってプルプル震える小さな犬がいました。
職員の方が言いました。「この犬は18歳なんですよ。」なんでいきなり年齢をおっしゃったのかわかりませんでした。
「18年も生きたんですか?」非常に的外れな発言でした。職員の方は怒りを必死で抑えるかのようにおっしゃいました。
「私が言いたいのは、18年も一緒に暮らしてきたこの犬を、死ぬのを見るのがイヤだからとここに持ってきた人がいるということです。」
正直、この話が一番衝撃的でした。しかもそういう人は珍しくないというのです。
こんなことが出来る連中が実際に存在するのです。
人が人を愛するのと同じくらい、犬は人を愛することが出来る動物だとわたしは確信しています。
18年も一緒にいた人に死ぬ間際、突然捨てられるのです。
一体どうして、こんな酷いことができるんでしょうか?私にはどうしても理解できません。

そしてその反対側の檻の奥には即席で作られたスペースがありました。
そこには黒く大きな犬と何匹かの子犬がいました。ここに連れてこられたとき、この黒い母犬は妊娠していたんだそうです。
もしかしたら子犬たちに飼い主を見つけてやれるかもしれない。
母犬がいるので生まれたばかりの子犬も世話してやれる。
そう思ってこの即席のスペースで母、子たちともに育てているのだそうです。
職員の方々のこの行為に関しても異を唱える人がいるでしょう。
もし新しい飼い主を見つけてやることが出来なければどうするんだ。
そうなれば確かにこの子犬たちは殺されます。しかしそれをするのもまた彼ら現場の職員たちなのです。
職員の方はすべてを受け入れる覚悟で生かすことを選択しているのです。

殺処分のすべての問題についていえることですが、職員の方を非難するのは完全に筋違いです。
彼らは厳しい現実と折り合いをつけつつ、自分たちの良心に従って行動しているのです。
非難・断罪されるべきは無責任に家族を殺してくれと依頼する飼い主連中です。

この施設のHPでは平成元年から16年までの

犬捕獲総数(成犬・子犬別)
引き取り犬頭数(成犬・子犬別)
返還頭数
譲渡された頭数(成犬・子犬別)

の、データが記載されています。数字ではわかりにくいのでエクセルなどでグラフ化してみてください。
捕獲・引き取り数は元年の約16000頭から、16年の約2000頭まで激減しています。
激減に一番関わってくるのが引き取られた子犬です。
これは飼い主たちに無責任な繁殖活動を倫理的に許されないと思わせた社会の勝利ではないかと思われます。
職員の方もおっしゃっていましたが、テレビでも動物関連の番組が数多く放送され、動物に対する人々の関心の高さを知ることが出来ます。
放送局が視聴率を稼げない番組を放送し続けることはありえません。
捕獲される犬はこれからも確実に減っていくことが予想されます。
法律の名の下に、野良は片っ端から捕獲されるのだから当然です。子を産む成犬が減るのだから子犬も減少することになるでしょう。
またこの中の迷い犬たちも上記の環境省のシステムにより飼い主の元へ返れる数が増加することが予想されます。

このデータで唯一数字がほとんど横ばいなのが成犬の引き取り頭数です。
つまり身勝手な理由で施設に殺処分を依頼する飼い主の数が減っていないということです。
今まで書いてきた様々な問題の根っこはこの部分にあるのではないかと私は思うのです。
いくら優れた譲渡システムが稼動しても、収容される動物の数が減らなければいつまでたっても無責任な飼い主連中の尻拭いを行政がしなければなりません。それに、成犬が譲渡される確立は子犬に比べて著しく低いのが現実です。

ではどうすれば不幸な動物をなくすことが出来るでしょうか?

わたしなりに答えを出してみました。

一人一人のモラルの向上。

これしかありえない気がします。いくら法律を強化しても、それで人を縛ることは出来ません。
それは毎日のニュースを聞いていればわかるとおもいます。
そんなことで犯罪がなくなることはないのです。ではわたしに出来ることはなんなのか。

まず今回の見学で知った現実を周りの人間に伝えることから始めました。
3人に話しました。そしてその3人に約束してもらいました。必ずこのことをあなたのまわりの3人に伝えてほしいと。

またこのうちの二人と話しているとき、一人が言いました。
自分の子供たちにも知ってほしいと。
凝り固まった価値観をいとも簡単に打破してします力が子供たちの言葉にはあります。
なにも施設に行く必要はありません。こんな現実はなくさなければならない、子供たちに命について考えさせるいい機会だと、そう思う親たちが子供に話して聞かせればいいのです。
またこれが学校で子供同士が話し合えるような場が出来れば・・・・。
中にはそんな酷いことを子供に教えるなと的外れなことを言う親もいると思います。
運動会などで順番をつけるのはかわいそうだ。
順番なんてつけるなと、こんな馬鹿なことがまかり通ってしまう。
社会に出て競争原理が働かない場所なんてどこにもないことは、大人たちが一番よくわかっているはずです。
にもかかわらず競争力を奪うような教育をしてどうするのですか。
文部科学省の教育方針に沿った結果、日本人の学力が年々落ちているのは周知の事実です。
なにが正しく、なにが間違っているのか。権威あるものが決めたことが正しいとは限りません。自分で情報を集め、判断することが大切です。

別れ際に職員の方がおっしゃいました。
「他の施設もぜひ訪ねてください。今回わたしが話したことは、わたしの独断と偏見が混ざっていると思います。他の意見も聞かれることをお薦めします。」

最後まで読んでくださりありがとうございました。わたしも職員の方と同じ言葉でしめさせていただきたく思います。私の意見、書かれていることを鵜呑みにせず、頭ごなしに信用せず、他の方の考えもぜひ参考になさってください。ネット上から様々な意見に触れることが出来ると思います。そしてこの事実を知ってしまったあなた。私の意見まで伝える必要はありません。犬・猫たちの生と死の現実を3人の方に伝えてください。

06/2/11 かおり


かおりさんのBlog より許可を頂いてWebページにまとめさせて頂きました