全米人道協会(The Humane Society of the United States: HSUS

First Strike(TM)キャンペーン

動物虐待事件2001年報告書
訳  ちゅん

 

2000年、全米人道協会(HSUS)は、目立った動物虐待の事例に関する国内規模の報告書を初めて作成し、20014月に発行した。以下に報告する内容は、20011月〜12月の間に全米で発生した事例に基づく。第一回目の報告書にならって、全米を対象とした動物虐待者、虐待された動物の種類、および目立った動物虐待の事例における家庭内暴力の発生率を統計にまとめた。

 

この報告書が、科学的手法を利用した調査ではないことを強調しておく。むしろ、マスメディアによる報道、地元の人道協会やその他の動物愛護団体の報告を含め、多くの文書を基にした寸描となっている。ベースとなっているのは、1863人の加害者を含む1677件の動物虐待事件に関する情報である。これらの動物虐待事件のうち、939件(56%)が動物に対する故意の虐待であり、738件(44%)は極度な飼育放棄である。また、動物同士を戦わせること(闘犬および闘鶏)、動物を仮囲いに閉じ込めること/一ヶ所に寄せ集めることについての事例も掲載した。所見で扱われる動物虐待の種類は以下に分類される。

 

・故意の虐待−故意に動物に餌、水、小屋を与えない、社会性を身に付けさせるための訓練をしない、獣医に診せないこと。または、動物を悪意から拷問する、不具にする、手足などを切断する、あるいは殺すこと。故意に動物を虐待する人は、動物を傷つけることで満足感を得ている。

 

・飼育放棄−適切な小屋、餌、水、世話、グルーミング、または獣医師によるケアを動物に与えないこと。飼育放棄の事例は犯罪というよりは、怠惰による行為であり、動物を放置する人は、自分の行為に喜びを感じていない。

 

・闘鶏−シャモとして知られている、特別に繁殖された2羽以上の鳥が、主に賭け事や娯楽のために、狭い檻に入れられて戦わせられること。闘鶏は通常、どちらかの鳥が命を落とす結果になる。両方死んでしまうこともある。

 

・闘犬−闘うために特別に繁殖され、条件付けられ、訓練された2匹の犬が闘犬場(一般に、ベニヤ板で囲まれた小さな円形の闘犬場)に入れられて、観客が賭け事をしたり、観戦したりするために、戦わせられること。

 

・動物の集積−多数の動物を詰め込むように囲って、最低基準しか満たさない内容の餌、衛生管理、獣医師のケアしか提供しないこと。また、動物および/または環境の状態を悪化させるままにしておくこと。

 

検討事項

本書は目立った動物虐待の事例を扱った、全米人道協会(The Humane Society of the United States: HSUS)の第2回目の報告書である。全体的に、成人男性と十代の若者による故意の動物虐待が占める割合が最も高いが、十代の若者に比べると、動物虐待の罪で告発されるのは成人男性の方が多い。このことから、法執行機関と裁判所が果たして、十代の若者による動物への暴力を真剣に受け止めているのかどうか、重大な懸念が生じている。

 

報告書によると、故意の動物虐待を行なった者のうち、十代の若者は20%を占めている。この数字は、少年司法犯罪防止局(The Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention: OJJDP)が報告した、他の暴力事件による少年の逮捕に関する所見と一貫性がある。OJJDPによれば、暴力犯罪で逮捕された者のうち、少年の占める割合は16%で、暴行罪は18%になる(2002年 Snyder)。ただし、動物虐待との関連が深いことで知られているその他の少年犯罪に比べて、動物虐待自体が報告された少年の割合は低い。例えば、放火による逮捕の53%、公共物の破壊による逮捕の41%は少年が占めている(2002年 Snyder)。OJJDPは現在のところ、動物虐待による逮捕の追跡調査を行なっていないが、この報告書の所見では、少年による動物虐待数を統計局に報告すべきだと、法執行機関の当局者に提唱する。より重大な暴力犯罪の中に動物虐待を含めることにより、法執行当局者、精神衛生療法士、少年刑務所員はより優位な立場にたって、動物への犯罪に対して適切な罰則を決定することができるだろう。

 

十代による動物虐待がしばしば、将来的には人間への暴力につながりかねないことを示す「赤信号」または注意信号であることを、近年になって心理学者、犯罪学者、社会学者が認識し始めた。また、学校での銃撃事件や連続殺人が大半を占める複数の目立った事例では、若者がどのような経緯で、初めての暴力行為を動物に向けるのかが例証されている。最近の研究によると、最も凶悪な犯罪者を収容するフロリダの刑務所に服役中の暴力犯罪者は、それ以外の犯罪者に比べて、子供の頃にペットを虐待したことのある者が非常に多い傾向にある(2001年 Merze-Perez他)。

 

動物を虐待する若者の動機については、成人の場合ほど包括的な調査はされていないが、研究者は精神発達に関連のある動機をいくつか示唆している。若者が動物虐待をするのは、仲間内からの圧力が動機となることがあり、それは退屈さや鬱屈した感情を吐き出すためだったり、性的な満足を得るためだったり、後に人間に対して暴力を振るう前のリハーサルのためだったりする(1998年 Lockwood & Ascione)。このような若者には自分の内面を抑制する力がほとんどないため、他の生き物に対して力と支配を行使したいという要求が内在化する。さらに、動物を傷つける若者の多くが、身体的・性的虐待の犠牲者であった。1983年、児童虐待を扱うニュージャージー区青少年家族サービス(New Jersey Division of Youth and Family Services)の家庭調査によると、ペットを飼っていて、児童虐待があった家庭のうち、33%の子供が動物虐待をするようになり、自分が見たか、経験した暴力行為を真似することが多く見受けられた(1983年 De Viney他)。

 

この報告書では、最も残虐な動物虐待は家庭内暴力と児童虐待と重なって発生していることが示されている。このような認識から、家庭内暴力に対応するために、人道協会と動物愛護団体を総合チームに含める法執行機関が増加の一途をたどっている。

 

動物虐待の事例への対処は、コミュニティにおける暴力を防止する上で様々な方法で役立っている。若年層の加害者にとって、動物虐待は法執行機関および/または精神衛生当局の対象となる最も初期の重大な犯罪という場合がある。これは、将来の暴力行為を防止することのできるサービスやセラピーを提供するための、最良かつ最初のチャンスかもしれない。家庭内暴力が背景となっている動物虐待の事例の場合、様々な犠牲者に暴力を振るう虐待者にとって、動物虐待は最初の、または最も目に付きやすい犯罪であろう。数々の反社会的行為のひとつとして動物虐待を行なった重大な暴力犯罪者の場合、動物虐待を追訴することは、今後起こるかもしれない他の暴力行為から市民を守るための手段となる可能性がある。虐待行為を、「男の子だから」とか「相手はたかが動物だから」などという時代遅れな意見で受け流してしまうと、動物虐待犯に介入する重要な機会が妨げられることになる。

HSUS推奨:コミュニティぐるみで法的に暴力を解決する

 

この報告書で扱っている事例は、地域の人道協会、動物愛護団体、法執行機関によって毎年調査される何千もの動物虐待事件のサンプルに過ぎないが、動物虐待がどんな人間なのか、犠牲者になる動物はどんな種類なのかを垣間見ることができる。おそらく実際の数はもっと多いだろうが、故意の虐待にかかわる十代の割合が大きいということは、より包括的な法律とコミュニティの介入が必要であることを示している。

 

近年、危害を加える恐れのある全米の若者に対して、動物に関連する暴力を予防・介入するためのプログラムが増加している。これらのプログラムでは、参加者に人道教育を施し、動物への尊重心を育てることによって、暴力と虐待の連鎖と断ち切るための取り組みが行なわれている。動物の訓練、世話の方法、かかわり方についての養成を行なうという点で、プログラムの目標はどれも類似している。2000年、HSUSはこれらのプログラムについて、「暴力の予防と介入、動物関連プログラム集(Violence Prevention and Intervention, A Directory of Animal-Related Programs)」という要録を発行した。プログラムの多くは革新的で、参加者の行為を良い方向へと変えてきた。それでも、プログラムの評価付けを正式に行い、他の生き物に対する共感、同情心、尊重心を持つ能力を高める上で、どの程度助けになっているかを判断することが重要である。我々の知る限りでは、2つのプログラムに正式な評価プロセスが実施されている。

 

両親、教師、ガイダンスカウンセラー、児童福祉者、仲間やその他の人々など若者にとって役割モデルとなる人たちにも動物虐待に関する情報を伝え、動物虐待がいかにその他の潜在的な暴力行為への「警告サイン」となるかについて教える必要がある。PTAや教育委員会、教師会など大きな組織にも、動物虐待に注意してもらい、若者が動物虐待をしている疑いがあったらどのようにして適切に介入するか、その方法についても組織のメンバーの人たちと情報を共有してもらうことが重要である。このような団体は地元の人道協会や動物愛護団体とも協力して、お互いに報告、訓練し合うようにすべきである。

 

コミュニティの尽力に加え、州の法執行機関も、動物虐待罪で有罪を宣告された者に心理カウンセリングを受けさせる法案を継続して支えていく必要がある。現在、8つの州(カリフォルニア州、コロラド州、アイオワ州、メイン州、ネバダ州、ニューメキシコ州、テキサス州、およびユタ州)で若年層の犯罪者に心理カウンセリングを受けさせることが命じられている。さらに、ロードアイランド州、ミズーリ州、バーモント州の3州で、動物虐待を行なったすべての犯罪者に心理カウンセリングを受けさせるという法案が出された。

 

全体的にみて、暴力への介入は、子供が十代になる前に始めるのが不可欠である。小学校の教室で人道教育を行なうことは、教師が動物への尊重心を子供に育むことのできる一方法である。これによって、動物に親切にすることが奨励されるだけでなく、将来、暴力を防止する上でも役に立つ可能性がある。

 

動物虐待は誰がするのか?

動物虐待の事例で大部分を占めるのは男の犯罪者であり、故意の動物虐待と動物の格闘観戦のほとんどすべても男が占める。興味深いことに、故意の動物虐待と動物の格闘観戦に関わる女は男に比べて非常に低い割合を占めているが、動物を狭いところに一ヶ所に囲っておく行為は女の方がずっと高い割合となっている。このデータはHSUSによる2000年の報告書の所見と一貫性がある。

 

故意の虐待では十代が1/5を占めており、うち十代の男がこれらの事例の95%を占める。このデータもHSUSによる2000年の報告書の所見と整合性がある。また、13歳以下の子供が故意に虐待を行なう割合は依然として低い。

 

以下の表は、様々な種類の動物虐待に関わった男女の比率を表している。

 

性別

全事例

故意の虐待

動物の格闘観戦

放棄

動物の囲い込み

76%

92%

91%

54%

38%

26%

8%

9%

46%

62%

 

以下の表では、故意に動物を虐待した犯罪者を年齢別に内訳した。

 

年齢

故意の動物虐待

子供

4%

十代

20%

成人

76%

 

こちらの表は、故意に動物を虐待した犯罪者を年齢・性別に内訳した。

 

故意の虐待

年齢

子供

96%

4%

十代

95%

5%

成人

91%

9%

 

 

動物虐待の犠牲者は誰か?

2000年に実施された調査と同じように、2001年の動物虐待の最大の犠牲者はコンパニオンアニマルだった。2000年では、コンパニオンアニマルが76%、家畜が12%、野生動物が7%、複数の種類の動物が5%の割合を占めた。以下の表は、2001年の動物虐待の犠牲者の内訳を示す。

 

動物の種類

虐待事例の割合

コンパニオンアニマル

74%

家畜

14%

野生動物

6%

エキゾチックアニマル

2%

複数の種類の動物

4%

 

 

特定の年齢層は特定の種類の動物を虐待のターゲットにしているのか?

子供、十代、成人とも、コンパニオンアニマルの虐待率は高い−各年齢層で70%以上を占める。興味深いことに、野生動物への虐待は十代と成人に比べ、子供の割合が最も高い。以下の表は、虐待者の年齢と動物の種類別による内訳を示す。

 

動物の種類

犯罪者の年齢

 

子供

十代

成人

コンパニオンアニマル

71%

75%

81%

家畜

0

8%

10%

野生動物

25%

14%

8%

エキゾチックアニマル

0

2%

1%

複数の種類の動物

4%

1%

1%

 

 

犬と猫の犠牲者はどのくらい多いのか?

2001年、犬に関連した虐待事例は猫に対する虐待よりも、総じて多く報告された。だからといって、猫よりも犬の方が虐待の犠牲者になりやすいわけではない。実際、多くの動物愛護団体によれば、犬よりも猫に対する虐待の発生率の方が多く報告されている。猫への虐待は、一般やメディアによってあまり報告されていないことがこれらの所見で示されている。また、法執行機関が猫への虐待に対処し、追訴することが、犬に比べると少ない可能性も示している。猫への虐待は、子供と成人に比べ、十代が最も高い割合を占めている。

 

以下の表は、犬猫に対する虐待の割合を示す。

 

動物の種類

虐待の全事例

67%

22%

犬猫の両方

4%

複数の種類の動物(猫および/または犬を含む)

7%

 

この表は犯罪者の年齢による犬猫の割合の内訳を示す。

 

動物の種類

犯罪者の年齢

 

子供

十代

成人

71%

55%

73%

29%

43%

26%

複数の種類の動物

0

2%

1%

 

 

どのように虐待するのか?

故意の動物虐待の事例で、最も一般的な虐待方法は、殴る、拷問する、銃で撃つ、手足などの切断が挙げられる。男は各カテゴリーの大部分で90%を占める。女は毒を飲ませたり、首を吊ったりするケースがほとんどである。

 

以下の表は動物に行なわれた最も一般的な虐待の内訳を示す。

 

一般的な虐待行為

暴力的な事例の割合

男による事例の割合

女による事例の割合

殴る

18%

98%

2%

拷問する

17%

88%

12%

銃で撃つ

16%

98%

2%

切断する

10%

92%

8%

放り投げる

9%

88%

12%

火傷をさせる

6%

92%

8%

動物格闘の観戦

4%

91%

9%

蹴る

4%

93%

7%

窒息死させる

3%

93%

7%

毒殺する

3%

73%

27%

刺す

3%

89%

11%

首を吊る

3%

81%

19%

引きずる

2%

100%

0

性的虐待

1%

100%

0

溺死させる

1%

92%

8%

 

 

動物虐待と人間への暴力行為には関連性があるのか?

動物虐待が配偶者への暴力あるいは児童虐待と共に発生している事例では、女よりも男の方が割合が高い。動物虐待と老人虐待が共に発生している事例では、犯罪者の割合に男女差はない。配偶者への暴力、児童虐待と共に発生している事例、または配偶者/子供によって同時虐待が証言された事例では、動物を刺す、放り投げる、溺れさせるといった虐待が最も多く発生している。以下の表は動物虐待と家庭内暴力が共に発生した事例を年齢別に内訳したものである。

 

家庭内暴力の種類

(動物虐待と共に発生した場合)

犯罪者の年齢

 

配偶者への暴力

89%

11%

児童虐待

67%

33%

老人虐待

50%

50%

 

以下の表は、配偶者や子供によって虐待が証言されたり、虐待者が配偶者への虐待と児童虐待で告発されたりした場合の動物虐待の事例を内訳したものである。

 

虐待行為

配偶者への暴力、児童虐待、または配偶者/子供によって証言されたこれらの暴力が、動物虐待と同時に発生した割合

刺す

37%

放り投げる

29%

溺れさせる

22%

蹴る

21%

火傷させる

19%

殴る

17%

 

 

動物虐待で訴えられた者の人数は?

動物虐待に関連した男の3/4、女の67%以上が逮捕され、動物虐待罪で起訴された。さらに、動物虐待に関連した十代の60%以上、成人のほぼ3/4が動物虐待で起訴された。他の年齢層に比べ、子供が起訴されることは少ない。以下の表は、動物虐待で起訴された者を性別と年齢で内訳したものである。

 

性別

起訴

75%

68%

 

 

年齢

起訴

子供

35%

十代

66%

成人

74%

 

 

全米ではどのくらいの数の動物が虐待にさらされているのか?

残念ながら、すべての動物虐待の事例を監視するための全国追跡システムが存在しないために、虐待の犠牲となっている動物の数や、犠牲となる可能性のある動物の数を特定することはできない。この報告書でレビューされた事例のサンプルによると、故意の動物虐待では一件の事例につき平均5.1匹(羽)のコンパニオンアニマルが犠牲となっており、飼育放棄や囲い込みの事例では一件につき平均22.7匹(羽)のコンパニオンアニマルが犠牲となっている。レビューされた事例では、動物の55%が殺されるか、傷のために安楽死させられている。

 

 

参考文献

 

De Viney, L., Dickert, J., and Lockwood, R. 1983. The care of pets within child abusing families. International Journal for the Study of Animal Problems 4(4):321-336.

 

Lockwood, R. and Ascione, F.R. 1998. Cruelty to Animals and Interpersonal Violence: Readings in Research and Application. West Lafayette, IN: Purdue University Press.

 

Merz-Perez, L.M., Heide, K.M., and Silverman, I.J. 2001. Childhood cruelty to animals and subsequent violence against humans. International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology 45(5):556-573.

 

Synder, H.. 2002. Juvenile Arrests 2000 [Forthcoming]. Washington DC: Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention.